ガス機器を10年以上販売して生きているキュウタといいます。
新築を建てるときに悩まれるポイントの一つが「オール電化にするか、ガス併用住宅にするか」の問題です。
その中でも今回は給湯器にスポットを当てて、「エコキュート」と「エコワン」を徹底比較して、どちらがおトクになるのかをまとめました。
先に結論を言います。
基本的には、エコキュートの方がランニングコストはおトクです。
ただし、床暖房や浴室暖房などを設置する場合には、エコワンの方がおトクになる可能性が高いです。
ではどんな環境であれば、エコワンの方がメリットが出てくるのか?
ランニングコストは両者でどのくらい違うのか?について、
具体的な数値で詳しく解説していきます。
エコキュートとは?
オール電化住宅に使われる主流の電気式給湯器です。
エコキュートの正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」といいます。
ヒートポンプ技術によって空気の熱を利用し、お湯を沸かす家庭用給湯システムのことです。
エコキュートはヒートポンプユニットと貯湯タンクがセットになっています。
仕組みとしては、まずヒートポンプユニットが空気の熱を取り込んで自然冷媒が吸収します。
熱を取り込んだ自然冷媒を圧縮することで水の温度が上がっていき、
作られた65~90度のお湯は貯湯タンクで保温されて、給湯時には水を混ぜて設定温度でお湯を出す、という流れです。
安い夜間電力を使用して効率良くお湯を沸かすので、省エネになっています。
エコワンとは?
ECO ONE(エコワン)は、リンナイが2010年から販売しているガスの瞬発力と電気の持久力を併せ持ったハイブリッド給湯器のことです。
タンクにお湯をためる仕組みはエコキュートと全く一緒です。
ヒートポンプで取り込んだ空気中の熱を利用して、タンクにお湯をためています。
エコキュートと違うのは、バックアップで24号のエコジョーズ(高効率ガス給湯器)を搭載していることです!
大量にお湯を使う場合は、タンクのお湯に加え24号のエコジョーズ(高効率ガス給湯器)がお湯を作るので湯切れの心配がない!という商品です。
エコワンとエコキュートのランニングコスト比較
今回エコワンとエコキュートのランニングコストを比較するにあたって、ノーリツの経済性シミュレーションを使用しました。
※リンナイの経済性シミュレーションでは、エコキュートとの比較ができなかったため。
エコワンはリンナイの商品ですが、ノーリツも同様にハイブリッド給湯器「ユコアHYBRID」を販売しております。
リンナイ製とノーリツ製は、若干の違いはありますが、大まかな仕組みとしては一緒なので、エコワンのつもりで読み進めてください。
温水暖房のあり・なし、ガス種はプロパンか・都市ガスかによってシミュレーションが変わるので、4パターンに分けて解説します。
※ちなみにリンナイとノーリツのハイブリッド給湯器の違いについて、詳しく知りたい方は別記事でまとめましたので下記をチェックしてください。
おすすめ記事
①温水暖房なしの場合(プロパン)→エコキュートの勝ち
年間光熱費の比較シミュレーション
【条件:家族4人。エコキュート→オール電化料金(関西電力)で試算。エコワン→ガス代は2022年大阪府の平均LPG料金「基本料1,800円、従量料金480円」で試算。電気代は関西電力の従量電灯Aで試算】
こちらは温水暖房(床暖房・浴室暖房)がない一般的な給湯+追いだきの家のシミュレーションです。
この条件で比較すると、エコキュートの方がエコワンより年間約12,000円おトクになります。
10年間使った場合のランニングコストの差は約120,000円です。
エコキュートは月平均コストが2,517円に対して、エコワンは月平均3,517円(電気代+ガス代)です。
エコワンでも十分安いですが、それ以上にオール電化の深夜料金が効いているのでエコキュートの方が安くなります。
②温水暖房なしの場合(都市ガス)→エコキュートの勝ち
年間光熱費の比較シミュレーション
【条件:家族4人。エコキュート→オール電化料金(関西電力)で試算。エコワン→ガス代は2022年3月大阪ガスの都市ガス料金で試算。電気代は関西電力の従量電灯Aで試算】
この条件で比較すると、エコキュートの方がエコワンより年間約7,700円おトクになります。
10年間使った場合のランニングコストの差は約77,000円です。
エコキュートは月平均コストが2,517円に対して、エコワンは月平均3,158円(電気代+ガス代)です。
月額のコスト差は約640円ほどですが、エコキュートのオール電化料金(深夜電力料金)の安さが上回っています。
③温水暖房ありの場合(プロパン)→エコキュートの勝ち
年間光熱費の比較シミュレーション
【条件:家族4人。エコキュート→オール電化料金(関西電力)、電気式浴室暖房、電気式(ヒーター式)床暖房ありで試算。エコワン→ガス代は2022年大阪府の平均LPG料金「基本料1,800円、従量料金480円」、温水式浴室暖房、温水式床暖房で試算。電気代は関西電力の従量電灯Aで試算】
こちらは床暖房・浴室暖房ありの場合のプロパンのシミュレーションです。
暖房機器はガスの得意分野ですので、短時間で効率的に多くのお湯(熱)を作り出すことができます。
それでもこの条件で比較すると、エコキュートの方がエコワンより年間約6,300円おトクになります。
10年間使った場合のランニングコストの差は約63,000円です。
エコキュートは月平均コストが7,142円に対して、エコワンは月平均7,667円(電気代+ガス代)です。
グラフを見てもらうと分かるように、冬場はほとんど光熱費の差はありません。
電気式の暖房機は手軽に導入できる一方で、ランニングコストが割高になります。
④温水暖房ありの場合(都市ガス)→エコワンの勝ち
年間光熱費の比較シミュレーション
【条件:家族4人。エコキュート→オール電化料金(関西電力)、電気式浴室暖房、電気式(ヒーター式)床暖房ありで試算。エコワン→ガス代は2022年3月大阪ガスの都市ガス料金、温水式浴室暖房、温水式床暖房で試算。電気代は関西電力の従量電灯Aで試算】
このパターンに限り、エコワンの方がエコキュートより圧倒的におトクになります。
この条件で比較すると、エコワンの方がエコキュートより年間約21,500円おトクになります。
10年間使った場合のランニングコストの差は約215,000円です。
エコキュートは月平均コストが7,142円に対して、エコワンは月平均5,350円(電気代+ガス代)です。
月平均でみても約1,800円ほどエコワンの方が光熱費が安くなります。
グラフを見てもらうと分かるように、春夏の光熱費はエコキュートに負けておりますが、冬場はエコワンの圧勝です。
※本記事のランニングコスト比較はあくまで給湯器部分のみの比較です。コンロやIH、エアコンなどの光熱費は含みません。
※各ガス会社の割引料金は含んでいません。例えば、床暖房設置でガス料金5%割引など、ガス会社によっては設置したガス機器に応じて料金単価が安くなる場合があります。
なので、上記4パターンの試算はあくまで給湯器を検討するときの参考程度にしてください。
エコキュートにないエコワンのメリット4点
①お湯切れの心配がない
エコキュートはヒートポンプでお湯をためて、タンクにたまっているお湯しか使えません。
その分タンク容量を370L、460L以上といった大きいタンクを用意しておりますが、どうしても湯切れのリスクがあります。
一方エコワンは、バックアップで24号のエコジョーズ(高効率ガス給湯器)を搭載しています。
大量にお湯を使う場合は、タンクのお湯に加え24号のエコジョーズ(高効率ガス給湯器)がお湯を作るので湯切れの心配がいりません。
その分エコワンのタンク容量は最大でも160Lなので、コンパクトな設計になっています。
②給湯圧が高い
タンク式の給湯器は、タンクでお湯をためる構造上、必ず減圧弁が入っています。
水圧を強制的に落としてタンクが壊れないようにしている、ということです。
売れ筋のエコキュートの場合、1.7キロ〜1.9キロ圧の減圧弁を搭載しています。
一般的なご家庭の水圧は、約2キロ〜3キロですので、1.7キロ程度ではもの足りない水圧となります。
一方、エコワンは4キロの減圧弁を搭載しているので、家でお使いの水圧と同等の給湯圧を確保できます。
特に、シャワーの浴び心地には大きな差が生まれますよ。
③停電に強い
停電時でもガスが供給されていれば、停電対応ユニット(別売)を使って、車のシガーソケットから電気をとりお湯を出すことができます。
追いだきや暖房はできませんが、給湯は可能ですので、非常時にお湯が出るだけでも助かります。
④温水式の暖房機との相性がよい
電気だと光熱費が高額になるような床暖房や浴室暖房などでも、ガスなら効率よくお湯を作って暖めることができます。
ガスの特徴として短時間で「熱(お湯)」を作り出すのが得意です。
例えば
エコキュートの場合、ゆっくり時間をかけてお湯を作ります。機種にもよりますが1分間に約1.5L〜2Lのペースでしかお湯を作れません。
エコワンの場合、バックアップでエコジョーズ(高効率ガス給湯器)が内蔵しているので、最大で1分間に約24Lのお湯を作ることができます。
寒冷地ともなるとガスファンヒーターやルームヒーター、浴室暖房などは必須のアイテムといえます。
立ち上がりの早さや暖まり具合からいっても、暖房機はガス式(温水式)の方がパワフルでオススメです。
エコキュートにないエコワンのデメリット2点
①初期費用が高い
エコキュートはオール電化住宅の必須アイテムとして、どんどん普及しているので、市場の相場価格も非常に安くなっています。
エコキュートの工事費込みの相場でいけば、機種にもよりますが約40万円〜45万円ほどです。商品代の相場が25万円〜35万円くらいの機種が売れ筋です。
一方、エコワンの工事費込みの相場は、機種にもよりますが約65万円〜70万円ほどです。商品代の相場が45万円〜60万円くらいですので、これからもっと普及すれば市場価格も下がってくると思われます。
なので、両者には初期費用で約25万円ほどの差があります。
エコワンにその初期費用の差をうめるだけの魅力を感じるかどうかがポイントです。
②タンク容量が小さい
エコキュートのタンク容量370L・460Lに比べると、エコワンはタンク容量が小さいため、断水時に使える水の量は半分以下となります。
ただし、エコワンでも最大160Lの水が使えます。
トイレで1回流す水量を5Lとしても32回分は使える計算ですので、災害対策としては十分な量であるといえます。
まとめ
・エコキュートにないエコワンのメリット4点
①お湯切れの心配がない
②給湯圧が高い
③停電に強い
④温水式の暖房機との相性がよい
・エコキュートにないエコワンのデメリット2点
①初期費用が高い
②タンク容量が小さい
何度も言いますが
基本的には、エコワンよりエコキュートの方がランニングコストはおトクです。
ただし浴室暖房や床暖房を設置する場合は、エコワンの方がおトクになる可能性が高いです。
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